夏は、標高の高い山を歩くのに適した季節です。冬には雪に覆われている山でも、夏になると登山道が現れ、火口や噴気、溶岩、高山植物などを間近に見られるようになります。ロープウェイや道路を利用し、比較的短い時間で火山の景色を楽しめる山もあります。
一方、活火山には、突然の噴火や火山ガスなどの危険があります。山の難易度も、遊歩道を歩くコースから本格的な登山までさまざまです。
この記事では、初心者が選びやすいコースを中心に、夏に歩きたい日本の活火山7座を紹介します。小さい子供と一緒に登りたい方も、ぜひ参考にしてみてください!
※掲載している所要時間は、一般的な歩行時間の目安です。休憩時間や混雑、天候、体力によって変わります。
活火山とは?

活火山とは、過去おおむね1万年以内に噴火した火山や、現在も活発な噴気活動が見られる火山を指します。「活火山」といっても、いつも噴火しているわけではありません。静かに見える山や、長い間噴火していない山も活火山に含まれます。
火口や噴気、溶岩、火山灰の地層などを観察できるのが、活火山を歩く魅力です。
一方で、火山活動は急激に活発化することがあり、明確な前触れが分からないまま噴火する可能性もあります。
過去には、噴火警戒レベルが低い状態で突然噴火した例(2014年の御嶽山噴火など)もあります。「現在は静かだから安全」と考えず、活火山に入ること自体に一定のリスクがあることを理解しておきましょう。
登山を計画するときは、気象庁のWEBサイトで、最近の火山活動、噴火警報・予報、噴火警戒レベル、火山の解説情報を確認してください。
火山情報は計画時だけでなく、出発前や登山当日の朝にも確認することが大切です。自治体や観光協会が発表する立入規制、登山道の通行止め、ロープウェイの運行状況もあわせて確認しましょう。
夏に活火山へ登る魅力

噴火や火山ガスなど、さまざまな危険性がある活火山ですが、ここだけの魅力もたくさんあります。火山ならではの景観や温泉などの恩恵を、ぜひ実際に登って確かめてみてください!
火口や溶岩など、火山がつくった地形を歩ける
火山が作り出したスケールの大きい景観を、間近で体感できます。火口湖・噴気孔・溶岩原・火山礫の斜面など、見られる景色はさまざまです。
また、山の形だけでなく、足元の岩や地面にも注目すると、溶岩がたくさん落ちていることに気づきます。過去の噴火が、現在の風景をつくってきたことを感じられるはずです。
高山植物と荒々しい大地を一緒に楽しめる
夏になると、登山道に色鮮やかな高山植物が咲き乱れる山は多いです。
特に火山は、植物の少ない荒々しい地形と、少しずつ大地を覆っていく植物の対比が見られます。
登山後に温泉が楽しめる
登山後の温泉は、火山登山の魅力の一つです。
活火山の周辺には、地下の熱によって温められた温泉が多くあります。周辺に温泉があるか調べて、下山後の楽しみにすると良いでしょう。
ただし、登山後は疲労や脱水によって体調を崩しやすくなっています。入浴前に水分を補給し、長湯を避けて無理のない範囲で楽しみましょう。
夏の登山におすすめの活火山7選
ここからは、初心者でも登りやすい活火山を紹介します。トレッキングで気軽に景色を楽しめる火山もあるので、参考にしてみてください!
1.旭岳(大雪山)|噴気と高山植物を間近に見る

北海道の真ん中、道央エリアにある旭岳は、大雪山を構成する山の一つで、北海道最高峰です。
初心者は、ロープウェイ姿見駅を起点に、姿見の池や夫婦池を巡る散策路を歩くのがおすすめです。山頂へ登らなくても、噴気を上げる地獄谷と旭岳の雄大な姿を楽しめます。
初心者向けコース
旭岳ロープウェイ姿見駅〜夫婦池〜姿見の池〜旭岳ロープウェイ姿見駅
所要時間
約1時間30分~2時間
見どころ
姿見の池、地獄谷の噴気、高山植物、北海道らしい広大な景色
山頂まで登る場合は、火山礫の急斜面を往復する本格的な登山になります。
散策コースとは難易度が大きく異なるため、初心者は姿見の池周辺をゆっくり歩くところから始めましょう。
2.八幡平|火山がつくった湖沼と湿原を歩く

秋田県と岩手県にまたがる八幡平は、岩手県と秋田県にまたがる、なだらかな活火山です。
見返峠付近まで車で上がることができ、そこから山頂や八幡沼を巡る遊歩道が整備されています。急な上りが少なく、初めて高原を歩く人にも選びやすいコースです。遊歩道からは、火口湖の鏡池を見ることができます。
初心者向けコース
八幡平山頂レストハウス〜鏡沼〜八幡平頂上〜見返峠〜八幡平山頂レストハウス
所要時間
約1時間
見どころ
八幡沼、鏡沼、湿原、高山植物、アオモリトドマツの森
現在の噴気活動を見たい場合は、麓にある後生掛温泉自然研究路を組み合わせるのもおすすめです。泥火山や噴気孔、大湯沼などを観察できます。
下山後には、藤七温泉の露天風呂で、雄大な景色を見ながら疲れを癒してはいかがでしょうか?
3.蔵王山|エメラルドグリーンの御釜を眺める

蔵王山は、宮城県と山形県にまたがる火山です。エメラルドグリーンが特徴的な火口湖の御釜を見ることができます。
刈田岳付近までバスやリフトで上がれるため、短時間の散策から熊野岳への登山まで、体力に合わせて選べます。
初心者向けコース
地蔵岳~熊野岳~刈田岳
所要時間
約2時間
見どころ
御釜、刈田岳、熊野岳、火山礫の稜線、コマクサ
御釜周辺は霧が発生しやすく、強風が吹くこともあります。視界が悪いときは無理に先へ進まず、現地の規制や案内に従いましょう。
4.那須岳・茶臼岳|噴気を感じながら火口を巡る

栃木県と福島県の県境に位置する那須岳の主峰・茶臼岳は、現在も噴気を上げる活火山です。
ロープウェイを利用すれば、9合目付近から登れるので、比較的短い時間で山頂行けます。火口の周囲を歩けることが魅力です。
初心者向けコース
ロープウェイ山頂駅~茶臼岳山頂〜お鉢巡り〜ロープウェイ山頂駅
所要時間
約1時間40分
見どころ
山頂火口、白い噴気、那須連山の展望
茶臼岳は、強風が吹きやすい場所です。強風時や雷雲が近づいてきた時はロープウェイが運休となるため、運行状況をこまめに確認しましょう。
また、栃木県は夏季に雷が多発する地域です。黒い雲が近づいてくるなど、天気が変わりそうな兆候が見られた場合は早めに下山することが大切です。
5.赤城山|火山がつくった湖を見下ろす

群馬県に位置する赤城山は、一つの山頂ではなく、黒檜山・駒ヶ岳・地蔵岳など複数の峰からなる活火山です。山頂部の大きなくぼ地には、大沼(おの)や覚満淵などの湿地が広がっています。
初めて山頂を目指す場合は、比較的短時間で登れる地蔵岳がおすすめです。
初心者向けコース
八丁峠駐車場〜地蔵岳登山口~地蔵岳山頂(往復)
所要時間
約1時間30分
見どころ
大沼、黒檜山、カルデラ地形
体力に不安がある人は、木道が整備された覚満淵や、大沼・小沼周辺の散策をするのもおすすめです。最高峰の黒檜山は、急な岩場があるため、地蔵岳より難易度が高くなります。
6.伊豆大島・三原山|黒い溶岩の大地と火口を歩く

伊豆大島の中央にそびえる三原山は、40年前に噴火したことのある活発な火山です。
三原山頂口からは、遊歩道を通って火口展望台へ向かえます。さらにお鉢巡りをすれば、溶岩原や巨大な火口を間近に観察できます。
初心者向けコース
三原山頂口~火口展望台~お鉢巡り~三原山頂口
所要時間
約2時間30分~3時間
見どころ
三原山火口、1986年噴火の溶岩、割れ目噴火口跡
標高は高くありませんが、日陰が少なく、夏は強い日差しを受けます。飲料水を多めに用意し、気温が高い時間帯を避けて歩きましょう。
また、強風の日も多いため、状況に応じて無理をしない行程を組みましょう。
7.雲仙岳・普賢岳|新しい山、平成新山を間近に望む

長崎県の雲仙岳は、1990年代に噴火した活火山です。
雲仙岳には、複数の峰がありますが、そのなかでも普賢岳は登れる最も標高の高い山です。
ただし、3〜4時間程度はかかるため、普段運動をしていない方はきつく感じるでしょう。
初心者におすすめなのは、雲仙温泉街から気軽に登れる絹笠山です。山頂からは妙見岳や国見岳、1990年代の噴火で誕生した平成新山が見えます。反対側には橘湾も眺められます。
初心者向けコース
絹笠山登山口(雲仙メモリアルホール脇)〜絹笠山山頂〜白雲の池
所要時間
約1時間
見どころ
平成新山、雲仙温泉街、橘湾
1990年代に誕生した平成新山は、登山が禁止されていますが、仁田峠からロープウェイで妙見岳展望所を訪れれば間近に眺められます。
豪雨により登山道が崩れることがあるため、最新情報を確認してから出発しましょう。
難易度別に選ぶなら
「どの山に登るか迷う」という方に、簡単に難易度別におすすめの火山を紹介します。
まずは短い散策から始めたい人
- 旭岳
- 八幡平
ロープウェイや車でアクセスできるので、気軽に火山地形や高山植物を楽しめます。
2時間前後の山頂登山を体験したい人
- 蔵王山
- 那須岳(茶臼岳)
- 赤城山(地蔵岳)
- 伊豆大島
- 雲仙岳(絹笠山)
比較的気軽に登山を楽しめますが、強風や霧、雷雨が発生すれば難易度は上がります。短時間だからと油断せず、雨具や防寒着を準備しましょう。
活火山に入る前に気をつけたいこと

登山は、天気の急変や滑落などさまざまな危険が伴います。特に火山は、突然の噴火や火山性ガスなどのリスクがあることも忘れてはいけません。
最新の火山情報と立入規制を確認する
登山を計画するときは、気象庁のWEBサイトで、最近の火山活動、噴火警報・予報、噴火警戒レベルを確認しましょう。
あわせて、自治体や観光協会、火山防災協議会などが発表する登山道の通行情報も確認します。
火山情報は数日前だけでなく、出発前や登山当日の朝にも確認してください。噴火警戒レベルが低くても、突然の噴火や火山ガスの噴出が起こる可能性はあります。
天気の急変に注意する
夏山では、午後に積乱雲が発達し、雷や激しい雨が発生することがあります。
できるだけ早朝に出発し、午後の早い時間までに下山できる計画を立てましょう。雷鳴が聞こえたり、急に空が暗くなったりした場合は、山頂や稜線から速やかに離れます。
熊との遭遇に備える
北海道・東北・関東・中部地方などの山域では、登山中に熊と遭遇する可能性があります。登山前に、自治体、ビジターセンター、登山口の掲示などで、最近の熊の目撃情報を確認しましょう。
熊鈴や声などで人の存在を知らせ、見通しの悪い場所や沢沿いでは特に注意します。食べ物やごみのにおいを残さないことも大切です。
熊を見つけた場合は、写真を撮るために近づいたり、追いかけたりせず、落ち着いて距離を取ります。地域によって推奨される対応が異なるため、現地の案内を確認してください。
登山届を提出する
登山届を提出し、家族や知人にもコースと下山予定時刻を伝えておきましょう。
携帯電話の電波が届かない場所もあります。スマートフォンだけに頼らず、地図、予備の電源、ヘッドライトなども準備してください。
火山登山に適した装備を準備する
登山靴・雨具・防寒着・水・非常食・地図・モバイルバッテリーなどを持参しましょう。
火山灰や火山礫が広がる登山道は滑りやすいため、底のしっかりした登山靴が必要です。
火口に近づく山では、ヘルメットなど、自治体や火山防災協議会が推奨する装備も確認しましょう。
火山ガスや噴気に近づかない
噴気孔や火山ガスが発生している場所には近づかず、立入禁止区域には絶対に入らないようにしましょう異臭を感じたり、目や喉に違和感が生じたりした場合は、その場にとどまらず、風上側や安全な場所へ移動してください。
喘息や呼吸器、心臓などに不安がある人は、火山ガスが発生する場所を避けることも大切です。
無理のない計画を立てる
「初心者向け」と紹介されているコースでも、天候、体調、登山道の状態によって難易度は変わります。ロープウェイを利用する場合は、最終便の時刻や、強風で運休した場合の対応も確認しておきましょう。
体調不良や疲労を感じた場合は、山頂にこだわらず引き返してください。無事に下山することが、登山の最も大切な目標です。
まとめ|自分に合ったコースから夏の火山を歩こう
夏の活火山では、火口や噴気、溶岩地形だけでなく、高山植物や湿原などの自然も楽しめます。まずは自分の体力や経験に合ったコースを選びましょう。
そして、登山前には気象庁の火山情報、自治体の立入規制、登山道、天気、熊の出没情報を確認してください。
十分な準備を整えたうえで、夏の山でしか出会えない火山の景色を楽しみましょう。
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