火山旅行

火山がつくった高原へ行こう|親子で訪れたい日本の高原7選

夏になると訪れたくなる、風がさわやかで見晴らしのよい高原。広い草原や牧場、色とりどりの花を楽しめる高原のなかには、火山の活動と深く結びついた場所が数多くあります。

火山がつくるのは、円すい形の山や噴火口だけではありません。流れ出した溶岩や火砕流が土地を覆ったり、火山の麓に噴出物が積み重なったりして、広くなだらかな地形が生まれるときもあります。

さらに、高原らしい草原の多くは、火山がつくった土地に、放牧や採草、野焼きといった人の営みが加わることで守られてきました。

今回は、火山との関係を感じながら親子で訪れたい、7つの高原を紹介します。

朝霧高原|富士山の噴火がつくった広い裾野

静岡県富士宮市の朝霧高原は、富士山の西麓に広がる高原です。目の前に大きくそびえる富士山と、牧草地を歩く牛の姿は、朝霧高原を代表する風景です。春から夏にかけて朝夕に霧が発生しやすいことが、その名前の由来とされています。

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埼玉から静岡県にある祖母宅に向かう道中に、家族でよく立ち寄っていました!休憩所で販売していた牛乳やヨーグルトが美味しかった記憶

朝霧高原の成り立ち

富士山は、長い時間をかけて繰り返し噴火し、溶岩や火山灰などを周囲へ広げてきました。朝霧高原がある西麓も、富士山から流れた溶岩や火山噴出物が重なってできた広大な裾野の一部です。約17,000年前~8,000年前の冨士丘溶岩流の台地が、長い年月をかけて草木の生える高原になりました。

朝霧高原から富士山を見ると、山頂から麓まで続く長い斜面がよく分かります。富士山だけを眺めるのではなく、自分が立っている高原も富士山の一部だと考えると、景色の見え方が変わります。

富士山の土地を生かした酪農

朝霧高原では酪農が盛んで、広い牧草地が続いています。涼しい気候と広い土地を生かし、各地で乳牛が飼育されています。道の駅朝霧高原などでは、地域の乳製品や農産物を購入できます。富士山を眺めながら、高原で生まれた商品を味わってみてください。

親子で注目したいポイント

富士山の山頂から高原へ向かって、どのように斜面が広がっているかを観察しましょう。

周辺の風穴や溶岩洞窟、湧水地も合わせて訪れると、溶岩が地上と地下の両方に残した痕跡を学べます

参考
日本の地形千景 静岡県・山梨県:富士火山の火山地形(日本の地質百選:富士山)
富士宮市観光協会

志賀高原|火山活動がつくった湖沼と湿原の高原

長野県山ノ内町にある志賀高原は、標高1,300~2,300mに広がる高原地帯です。周辺には志賀山や笠ヶ岳、草津白根山などの火山が並び、森や草原のなかに大小さまざまな池や湿原が点在しています。

草原が一面に広がる高原とは異なり、火山、森林、湖沼、湿原が組み合わさった変化に富む景観が、志賀高原の大きな特徴です。

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大学のゼミ合宿で、駐車場&展望所である「のぞき」から志賀高原を見たことがあります!まるでデスクトップの背景のような美しい景色が撮れました

志賀高原の成り立ち

志賀山の噴火によって流れ出した溶岩が地表を覆い、起伏の多い火山地形をつくりました。流れた溶岩は、場所によって川の流れをせき止めたり、地表にくぼみを残したりしました。そこに雨水や雪解け水がたまり、数多くの池や湿原が生まれました。
その後、横湯川や角間川などによる侵食が進み、現在の高原や谷の地形が形成されました

志賀高原にある湖沼は、主に三つのタイプに分けられます。

  • 噴火口の跡に水がたまった火口湖:琵琶池・丸池・蓮池・長池・木戸池・三角池
  • 溶岩などが川をせき止めてできた湖:大沼池
  • 火山地形のくぼみに水がたまってできた湖沼:鉢池・黒姫池・元池・お釜池・志賀の小池

一つの高原で、成り立ちの異なる湖沼を見比べられることが、志賀高原の魅力です。

志賀高原の楽しみ方|池や湿原を巡りながら火山地形を観察

志賀高原では、木道や遊歩道を歩きながら、池や湿原を巡れます。山や森林、湖沼、河川を見ながらトレッキングを楽しんでみましょう。
池を見つけたときは、水面だけでなく、その周囲の地形にも注目です。周囲が丸くくぼんでいるのか、片側が盛り上がっているのかなどを観察すると、池ができた理由を想像できます。

親子で注目したいポイント

志賀高原では、池ごとに形や大きさ、周囲の植物が異なります。

「この池は火口にできたのかな」
「溶岩が川をせき止めたのかな」
「地面のくぼみに水がたまったのかな」

と考えながら巡ると、湖沼の見方が変わります。

また、火山がつくった地形に水がたまり、その水辺に植物や生き物が集まることで、豊かな自然環境が生まれていることにも注目してみましょう。志賀高原は、火山活動が地形だけでなく、生態系の土台にもなっていることを学べる場所です。

参考
志賀高原ユネスコエコパーク
日本の地形千景 長野県:志賀高原の火山地形と湖沼群
志賀高原の自然 地形・地質

美ヶ原高原|溶岩が広がって生まれた天空の台地

長野県の松本市・上田市・長和町にまたがる美ヶ原高原は、標高約2,000メートルに広がる高原です。最高地点の王ヶ頭を中心に、山の上とは思えないほど広く平らな風景が続きます。

美ヶ原高原の成り立ち

美ヶ原火山の火山活動によって、100万年前から80万年前ごろに形成された溶岩台地です。安山岩質の火山が、雨などによって長い年月かけて侵食され、現在のような広大な台地ができたと考えられています。

牛が歩く広い草原

美ヶ原高原では、明治時代から草地が放牧や採草に利用されてきました。現在も高原を歩く牛の姿が見られ、火山がつくった大地と人の営みが一体となった風景を楽しめます。

美しの塔から王ヶ頭方面へ続く道では、晴天時には360度のパノラマが広がり、草原と周囲の山々を見渡せます。北アルプスや八ヶ岳、富士山などを望める日もあり、標高の高さを実感できる場所です。

親子で注目したいポイント

「なぜ山の上に、これほど広く平らな場所があるのだろう」と考えながら歩いてみましょう。

朝霧高原や久住高原が火山の麓に広がるのに対し、美ヶ原高原は火山の上に残された台地です。その違いが、美ヶ原の大きな特徴です。

参考
美ヶ原の歴史
美ヶ原
美ヶ原観光連盟公式サイト

神鍋高原|噴火口と溶岩流が残る火山の教室

兵庫県豊岡市にある神鍋高原は、神鍋山を中心とした火山地域です。7つの高原のなかでも、火口や溶岩を比較的身近に観察できる場所です。

神鍋高原の成り立ち

神鍋高原の周辺では、約70万年前から場所を変えながら火山活動が繰り返されました。西気火山、大机火山、ブリ火山、太田火山、清滝(きよたき)火山など、異なる時代にできた小規模な火山が集まり、神鍋火山群を形づくっています。

そのなかで最も新しい火山が、現在の神鍋高原を代表する神鍋山です。神鍋山は、約1万~2万5千年前の間に発生した噴火によって誕生したと考えられています。
噴火では、地下から上昇したマグマが、スコリアと呼ばれる穴の多い火山岩などを噴き出しました。それらが火口の周囲に積み重なり、現在のお椀を伏せたような形の山がつくられました。
神鍋山の山頂には、周囲約750メートル、深さ約50メートルの噴火口が残っています。さらに、噴火で流れ出した溶岩が谷や低地を覆い、神鍋高原周辺の地形を形づくりました。

溶岩が川の景色を変えた

神鍋山から流れた溶岩は、周辺を流れる稲葉川にも影響を与えました。固い溶岩の段差から川の水が落ち、兵庫県指定の天然記念物である「溶岩瘤(こぶ)」や十戸滝、二段滝、八反滝などの滝や岩場がつくられています。

親子で注目したいポイント

神鍋山では、山頂のくぼみが噴火口であることを意識して、周囲の斜面と見比べてみましょう。地面に見える黒っぽい岩や、表面に穴が開いた岩にも注目すると、溶岩や火山岩が冷えて固まった様子を想像できます。

また、「神鍋山ができた約2万年前、この場所ではどのような噴火が起きていたのだろう」と考えながら歩くと、現在の穏やかな高原と過去の火山活動とのつながりを感じられます。神鍋山の周辺にはマグマが噴出した時にしぶきになったスコリアが落ちていますが、持ち帰らず、その場で観察しましょう。

参考
豊岡市観光公式サイト 神鍋溶岩流
日高神鍋観光協会 神鍋の歴史

蒜山高原|火山と湖がつくった酪農の大地

岡山県真庭市の蒜山高原は、上蒜山、中蒜山、下蒜山からなる蒜山三座の南側に広がっています。牧場や畑が点在し、ジャージー牛による酪農でも知られる高原です。

蒜山高原の成り立ち

蒜山高原の成り立ちには、蒜山火山群と大山の活動が関係しています。

約100万年前ごろ、火山活動によって蒜山の山々が形成されました。その後、約35万年前の大山の噴火による噴出物などが川をせき止め、「蒜山原湖」と呼ばれる湖が生まれたと考えられています。
蒜山原湖では珪藻と呼ばれる小さな生物が繁殖し、その殻が湖底に積み重なって、厚い珪藻土の層がつくられました。
しかし、湖からやがて水が流れ出すようになり、干上がって消滅します。湖の跡や火山麓に広がった土砂の堆積面が、現在の蒜山盆地や高原の基礎になりました。

なだらかな土地を生かした牧場

蒜山三座の南側には、火山から運ばれた土砂によってつくられた、傾斜の緩やかな裾野が広がっています。深い谷が少なく土地を利用しやすいため、農業や酪農などに活用されてきました。
「ひるぜんジャージーランド」では、ジャージー牛の肉料理やソフトクリームなどが味わえます。

親子で注目したいポイント

蒜山三座を眺めながら、その手前に広がる平らな土地との高低差を観察してみましょう。
かつて湖だったと想像すると、現在の牧場や畑が、水の底にあった時代を身近に感じられます。

参考
真庭観光局
日本千景プラス 岡山県:蒜山盆地と蒜山高原

久住高原|火山の裾野と人が守ってきた大草原

大分県竹田市にある久住高原は、九重火山群の南側に広がる高原です。草原の向こうに複数の火山が連なる雄大な景観を楽しめます。

「久住」は地域名や久住山などに使われ、「九重」は複数の火山からなる山群全体などを表すときに使われます。

久住高原の成り立ち

九重火山群には、久住山、大船山、三俣山、星生山など、20以上の火山が集まっています。多くは粘り気のある溶岩によってつくられた溶岩ドームが多く、その周囲を火砕流などの噴出物からなる緩やかな裾野が取り囲んでいます。

久住高原は、この九重火山群から流れた溶岩や、火砕流、火山灰などが積み重なった南麓の斜面に広がっています。地形を見ると、鋭く盛り上がった火山の山々と、その手前に続くなだらかな高原の対比がよく分かります。

野焼きが守ってきた草原

久住高原の草原は、火山の活動だけで生まれたものではありません。放っておけば樹木が増え、次第に森林へ変わっていく場所もあります。

地域では、採草や放牧に加え、春に枯れ草を焼く野焼きが行われてきました。こうした人の営みによって樹木の成長が抑えられ、広い草原景観が維持されています。九重火山群と周囲の草原は、阿蘇くじゅう国立公園を代表する景観です。

親子で注目したいポイント

九重連山の一つひとつの山の形と、その手前に広がる緩やかな斜面を見比べてみましょう。

また、「火山が土地をつくり、人が草原を守ってきた」という点に注目すると、久住高原の景観をより深く理解できます。

参考
地質調査総合センター
Chojabaru visitor center

えびの高原|火口湖と噴気に出会える生きた火山の高原

宮崎県えびの市と鹿児島県霧島市の境界付近にあるえびの高原は、霧島火山群の北西部に位置する標高1,200mの高原です。

周囲には韓国岳、甑岳、硫黄山などの火山が並び、火口湖や噴気など、火山活動がつくった多様な景観を観察できます。

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目の前に硫黄山の噴気を見ることができます!火山好きは絶対に訪れて欲しいです

えびの高原の成り立ち

霧島火山群では、長い期間にわたり、場所を変えながら噴火が繰り返されてきました。噴火によって複数の火山や火口がつくられ、その間にある比較的低く平らな場所が、えびの高原の基礎になっています。

周辺には、火口湖である不動池、六観音御池、白紫池などがあります。池ごとに大きさや色、周囲の植生が異なり、火口ができた時代や、その後の変化の違いを感じられます。

今も続く火山活動

硫黄山周辺では、噴気や火山ガスが見られます。植物が少ない地面や、火山ガスの影響を受けた土地は、火山が過去のものではなく、現在も活動を続けていることを伝えています。

火山活動の状況によっては、登山道や道路の通行が規制される場合があります。訪問前には、気象庁、自治体、現地施設などが発表する最新情報を確認してください。

また、えびのエコミュージアムセンターでは、霧島火山群の成り立ちや動植物について学べます。散策の前に立ち寄ると、屋外で注目するポイントを見つけやすくなります。

親子で注目したいポイント

池を見たときは、水の色だけでなく、周囲が丸くくぼんでいることに注目しましょう。

また、硫黄山周辺では、植物の生え方や地面の色の違いから、火山ガスや地熱の影響を考えられます。規制区域には決して入らず、整備された場所から観察してください。

参考
えびの高原

七つの高原を比べてみよう

高原主な成り立ち現地で見たいもの
朝霧高原富士山の溶岩や火山噴出物がつくった西側の裾野富士山の長い斜面、牧草地
志賀高原志賀山などの火山活動による溶岩や起伏のある地形に、川の侵食や水の作用が加わって形成火口跡や溶岩によるくぼみ、池、湿原、火山の山並み
美ヶ原高原火山の溶岩が広がり、高所に残った台地山上の平らな草原、溶岩の岩石
神鍋高原神鍋火山群と神鍋山の噴火・溶岩流によって形成神鍋山の火口、溶岩と滝
蒜山高原火山活動で川がせき止められた湖と、火山麓の堆積地形蒜山三座、かつての湖の跡
久住高原九重火山群の火砕流や溶岩などがつくった南麓火山の山並み、野焼きで守られた草原
えびの高原複数の火山と火口に囲まれた火山群内の高原火口湖、噴気、火山性の土地

火山の高原を訪れるときに気をつけたいこと

高原は市街地より気温が低く、夏でも天候が急に変わることがあります。薄手の上着や雨具を用意し、歩きやすい靴で訪れましょう

牧場や採草地は、観光施設ではなく仕事の場所でもあります。柵を越えたり、許可されていない場所へ入ったりせず、現地の案内に従ってください。

また、火口、噴気地帯、溶岩地形の周辺では、火山活動や落石、火山ガスなどに注意が必要です。立入規制がある場合は、必ず守りましょう。

高原の植物や岩石は、持ち帰らずにその場で観察します。写真やスケッチに残せば、帰宅後の調べ学習にも活用できます。

火山は、長い時間をかけて美しい高原をつくる

噴火の瞬間だけを見ると、火山は土地を壊す存在のように感じられるかもしれません。しかし、噴火で流れ出した溶岩や火山灰は、新しい土地の材料になります。

その土地が雨や川によって削られ、植物に覆われ、人が牧場や草原として利用することで、長い年月をかけて高原の景観がつくられてきました。

富士山の裾野に広がる朝霧高原、山の上に溶岩台地が残る美ヶ原高原、火口と溶岩流を歩いて観察できる神鍋高原、湖の跡に広がる蒜山高原。七つの高原には、それぞれ異なる火山の物語があります。

高原を訪れたら、景色を楽しむだけでなく、親子で問いかけてみてください。

「この平らな土地は、どうやってできたのだろう」
「向こうに見える山と、この高原はつながっているのかな」
「草原は、誰がどのように守ってきたのだろう」

そんな疑問を持つことで、いつもの高原が、地球と人の長い歴史を伝える場所に見えてくるはずです。

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火山ママくらりん
火山と食べることを愛するライター・ジオガイド/2児の母/火山の魅力・恩恵と教育のヒントを紹介します
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